試用期間は「正社員」ではないのか?(No.2)

Story.19

採用側も求職者に観察されている期間だと忘れてはならない

No.1では、試用期間は組織が求職者に寄せた「期待」に対し、「応える」ことが重要であり、そのステップを踏まなければ「信頼」を得ることは難しいと書きました。
試用期間は「正社員」ではないのか?(No.1)

しかし、同様に組織も、新しく入社した人からその組織に自分の人生を預けていいのか観察されているのを忘れてはなりません。
その中でも、求人票記載項目については、求職者も気にしている項目になりますので、今回は、この「試用期間」のパターンについて、採用側と求職者側の視点を加えながらいくつか書いていきます。

労働条件変更なし

試用期間中と試用期間終了後で労働条件(雇用形態や福利厚生)に変更が無い場合に記載されています。
※そもそも、試用期間が無い場合は記載はありません。
この場合は試用期間中であっても、試用期間終了後の雇用形態と同じですので、「正社員」雇用であれば、試用期間中でも「正社員」です。

同じなら書く必要ないのでは?と思うかも知れませんが、この試用期間を設けることによって、採用側と求職者側双方にあるメリットが生じます。

それは、双方が試用期間満了というタイミングで、継続するか退職するかに向けて話し合いができることです。

この時、求職者に一番メリットがあるのが「辞めたい」と思っていることを伝えやすいことです。
退職を伝えるのは大変エネルギーが必要であり言い出せない人も多くいますが、そういう中「続ける or 辞める」の二択のどちらかを伝えるタイミングがあるのは非常に大きなメリットとなります。

また、早期退職でも、次の会社の面接で「試用期間終了」というタイミングを前面に出せるので早期退職のダメージを減らすことができます。

「区切り」というのは心理的なハードルを下げる効果があり、人というのは不思議なもので、同じ3箇月でも「違和感があったので上司と話し合い3箇月で退職した」より「違和感があったので、試用期間が終了するタイミングで上司と話し合い3箇月で退職した」の方が、「明確な理由」として受け入れられ易い効果があります。
これは、採用側も求職者の資質を判断する目的で試用期間を設けているため、3箇月の早期退職にも関わらず「そんなものだと」心理的にバイアスを掛けてしまっていることが要因の一つです。
※退職理由を論理的に客観的に肯定的に語らなければ採用とはならないですが…

試用期間中は契約社員で、試用期間終了後正社員として雇用契約を結ぶ

この場合は、能力や人柄を見て試用期間終了後に契約を解除することができます。
しかし、冷静に考えると、企業が試用期間満了時で辞めさせることを前提で「正社員」を募集するわけが無いのです。
そのため、求職者がそれこそ「信頼」してもらえるだけの結果が出せる自信があるのであれば契約社員からスタートでも問題無い筈です。
※雇用形態が変わるため、給与や福利厚生が変わる場合もあるのでこれを嫌がる人が多いのは確かですが、このことについては別NOにて記載します。

労働基準法は労働者に有利に働く場合が多いので、会社としては自衛手段として「保険を掛けざるを得ない」ことが大きな要因です。
※雇用者と従業員は対等というのは理想であり、建前であるという矛盾を抱えており、その結果、労働関係の法律は従業員を守る内容が多くなっていると感じています。

最初の例で、試用期間を設けた場合、試用期間でも「正社員」ですので、「解雇」する場合はそれ相応の理由が必要となります。

解雇するためには、次のような問題が生じた時のみ可能となります。
  • 勤務態度に大きな問題がある
  • 正当な理由なしに遅刻や欠勤を繰り返す
  • 本人が申告した履歴に重大な虚偽の事実がある
  • その他、社会通念上解雇に値すると判断される

しかし、次のような理由では解雇はできません。
  • 期待していた成果を出せない
  • 思っていた人材と違う

これが、「期間満了」であればどのような理由であれ期間満了ですから、そこから再契約をしなければ済むのです。

採用というのは、採用業務に関わったことが無い人が想像できないぐらい時間とコストが掛かっています。
面接時は、未来に向けての「やる気」や「可能性」を示唆したに過ぎず「保障」が無い以上、簡単に解雇ができない現行法から会社を守るために、こういった「保険を掛けざるを得ない」のです。

しかし、先ほども書きましたが、あくまでも「保険」であり、試用期間満了後にも働き続けてもらうことが大前提なのは忘れないでください。

次回は、試用期間と条件が変わる場合と、試用期間の特殊な例について書きたいと思います。

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