優しい上司が良い上司とは限らない

Story.16

上司(役職者)に求められる役割とは何か?

前回の記事で、「上司(役職者)に求められる役割とは何か?」について記載してありますので、詳細はそちらをご確認ください。
モンスター上司が生まれるプロセス

今回は、前回の「モンスター上司」とは「一見」真逆でありながら、静かに組織を破壊していく「蝙蝠上司」について書きたいと思います。

人に優しいことが一番だと勘違いしている蝙蝠管理職

このタイプが生み出されるのは、実は2パターンあります。
まずは、管理するという「目的」を理解しておらず、さらに怒られることに慣れておらず、怒ることで嫌われることが怖く、常に人の顔色が気になり、組織の成長より自分が嫌われないことを第一とするパターンです。

このタイプが管理職(最初はリーダークラス)を目指す動機は、「自分は怒られるのが嫌だった(怖かった)ので、そうではない仲の良い組織にしたい」といったことが多いです(考課面談をしていると本当に多い)。

自分がされて嫌なことは、人にはしない…立派な心掛けですが、自分が何故「怒られた」のかを理解しようとせず、怒られた「理由」ではなく、怒られたから嫌だったという「感情」だけで「怒らない」上司を目指します。
当然怒り方に注意は必要ですし、ハラスメント行為は厳禁であり、ハラスメントをしない上司を目指したり、モンスター上司にはならないように心掛けることは必要です。
※今回は「怒る」と「叱る」は同様の定義として扱います。

また、このタイプは「怒られる」=「自分自身の人格を否定されている」と受け取りがちです。
はっきりと苦言及び持論を呈しますが、これは昨今流行りの「個性を伸ばす教育」「怒らない教育」など、大人や教育者が子供と向き合うことから逃げてきた結果、怒られ慣れていない若年者が増えた結果でもあると思っています。

このため部下を「怒る」ことは、相手の「人格を否定する」という思想が蔓延しており、「怒る」=「ハラスメント上司」「モンスター上司」と決めつけてしまう傾向があります。

もうひとつパターンは、上司や管理職であるにも関わらず「権限」を与えられておらず、上司と部下との間の伝書鳩と成らざるを得ない状態です。
この立場に置かれると、正直「上司が部下に直接指示しろよ」「部下が上司に直接言えよ」「俺いらねーじゃん」と言いたくなります。
本来権限を持ってマネージング、リーディングするのは責任を伴う非常に有意義でやりがいのある業務なのですが、日本では、この「権限を与えない」で「立場だけ与える」昔ながらの流行がいまだに続いている残念な組織が多いのもまた事実です。
今回は、こちらのパターンは除外して書きます。

会社と管理職の関係

私の投稿には何度も出てきていますが、会社は営利団体であり、バッサリ書くと利益を出すことが「目的」です。
その利益を出すための「手段」として、信頼関係のある組織や風通しのいい組織が必要なのです。

「仲良くする」とか「部下の気持ちを尊重する」ことが組織の目的ではありません。すなわち上司の仕事でもありません。

普段から「仲良くする」「部下の気持ちを尊重する」「コミュニケーションを取る」と言うのは、普段の業務を円滑に進め、有事の際には一丸となって立ち向かうための「手段」でしかありません。
これが普段から「仲良くする」とか「部下の気持ちを尊重する」ことが「目的」となったらどうなるでしょうか。

残業しなければ間に合わないのに、部下が「用があるから帰る」と言えば断れず自分でやらなくてはならない、普段の業務が「指示」ではなく「お願い」になる…これではどっちが上司かわかったものではありません。
完全に部下がイニシアティブを持っています。

仕事をしているとよくある「納期は前から決まっていたのに作業遅れで残業が発生する」シーンを切り出してみました。

上司(顧客):「納期は明日9時ですが間に合いますか?」

自分:「大丈夫です、なんとかします」(あー部下に残業お願いしないと…)

自分:「部下さん、明日の9時までに納品が必要なので残業してもらってもいいですか?」(指示ではなくお願い)

部下:(不機嫌そうに)「納品明後日じゃだめですか?」

自分:(慌てて)「そうだね、急なことだしね、上司(顧客)に聞いてみるよ」

自分:「残業指示したのですが【部下が】納期が明後日にならないかと言っています」(私はちゃんと伝えたけど、【部下】がこう言ったのです)

上司(顧客):(不機嫌そうに)「納期は前から決まっていたと思いますが」

自分:(慌てて)「そ、そうですね、私は伝えたのですが【部下】がどうしても聞いて欲しいと言ったので、念のため伝えました、再度指示出しておきます」(私はちゃんと伝えたけど、【部下】がこう言ったのです、私はちゃんと仕事しますよ?再度言い聞かせますね)

自分:「上司(顧客)に、伝えたけど取り合ってもらえなかったよ、【上司(顧客)】にも現場の苦労もわかって欲しいよね、悪いけど残業お願いしてもいいかな?」(私はちゃんと【部下】の気持ちを伝えたよ、だけど【上司(顧客)】が取り合ってくれなかったのだよ)

部下:(不機嫌そうに)「今日用があったのに…」

自分:「私も今日は早く帰ろうと思ってたんだけどね、会社勤めの辛いところだよね…」(自分たちは共通の被害者で、敵(悪いの)は上司(顧客)だよね、敵意は自分に向けないでね)

どうでしょうか?

似たような状況は身の回りで起きていませんか?

この会話のどこが問題なのか列挙すると…
  • 上司にも部下にも良い顔をしている。
  • 管理者(リーダー)としての責任ある態度が無い(決定できない)。
  • スケジュール管理ができていない(突発的な出来事の場合は仕方ない時もある)。
  • 常に「誰かのせい」にしている。
などなど…列挙すれば切りがありませんが、意外と着目する人は少ないのですが、最悪最低なのは、「保身のために社内に不協和音の種を撒いており、自ら率先して社内の秩序を保つという職責を放棄している」ことです。

この現象は、イソップ寓話の「卑怯なコウモリ」(Wikipedia参照)とまさに同じです。

「モンスター上司」は、誰から見ても不愉快ではないかと思いますし、実際、このタイプに苦しめられている方からの相談は多く受けています。

では「蝙蝠上司」はどうでしょうか?
一見問題なさそうなのですが、このタイプを放置しておくと組織が、同じ目的に向かう「チーム」から、仲良し「グループ」に成り下がってしまう危険性があます。
自分が批判されないために、見えない場所で、組織や自分より上の上司を悪者にしており、これは最早レジスタンスのリーダーです(本当のレジスタンスのリーダーは良い悪いは別としてもっとしっかり思想があると思うので一緒にするのも失礼なのですが…)。

そして、最終的には部下からも「蝙蝠上司に言っても意味がない」などと言われるようになり、自分が嫌われていると感じるようになると逃げるようにその組織から居なくなりますます。
一度根付いた不協和音は簡単には取り除けないので、実は「蝙蝠上司」の方が、静かに隠れて組織を壊していく、問題が大きい「クリーチャー上司」なのです。

これは、組織の在り方、権限の在り方など多様な問題が絡み合っているものの、結果として「アグレッシブ」「ノンアサーティブ」が、組織の中で起きている状態でもあります。
※「アグレッシブ」「ノンアサーティブ」につてはコチラ
Life Craft Works とは

最後に大事なこと

「モンスター」とか「蝙蝠」とか書いてはいますが、人は生まれながらに「モンスター」であったり「蝙蝠」であったりはしません。
そこに至るまでのプロセス(教育といった人に属する物、制度や職場環境など組織に属する物)が必ず存在します。

「罪を憎んで人を憎まず」とは言いませんが、相手や自分を責めることは簡単です。

2つの記事を読んで「あるある、○○は「モンスター(蝙蝠)」だ」と思った方もいるのではないでしょうか。
相手をラベリングして批判することは簡単であり、「モンスター」や「蝙蝠」も起きている事象に対してわかり易くラベリングしたに過ぎません。

私はこの2つの記事を書こうと思ったときに、書くべきか悩みました。

それは、この記事を読んだ方が「加害者」と「被害者」という構図にしてしまう恐れがあったからです。
ここに落ち込んでしまうと「対立構造」、もっと極論を書くと「被害者面した加害者」を生み出しかねません。

大切なのは、感情論ではなく組織論として「管理職として」と「人として」を切り分ける必要があり、それぞれの問題をそれぞれで捉え、どういったプロセスがあったからその問題が生じているかを考察し、改善していくということです。

この切り分けができず感情だけで論ずると、自分はされて不愉快な思いをしているにも関わらず、相手に対し同じように「管理者として能力が足りない」=「相手の人格を否定する」構造を生み出してしまうのです。

モンスター上司が生まれるプロセス
モンスター上司が生まれるプロセス

この記事には反響が大きく、「組織の○○は、モンスターだ」とコメントを数多くいただいております。
このことは大変うれしいのですが、是非今一度「モンスター」と断じたときに「役割や立場」に対して断じたのか、「人格」に対して断じたのか今一度考えて欲しいと思っています。

誰しもが、心には「モンスター」を飼っています。

自分の正義を掲げた時を狙って、その心の隙を突いて「モンスター」は人知れずあなたの中に顕現しているかも知れません。

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