就活生の気持ち
今回は就活生の親御さんに向けての記事となります。最初に知って欲しいのは、多くの就活生は口の出さなくても親御さんにとても感謝しているということです。
親の前では言わないでしょうが、「大学まで出してもらったのでいい就職をしないと」「沢山お金を使ってもらったから親の期待に応えないと」…
相談に来た就活生がどうしてこの台詞を口にするか想像できますか?
この答えの前に2つ大切なことを書きます。
就活生の親が最初にするべきことは「お金を出す」こと
この記事を執筆中は新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業がインターンシップや面接をオンラインに切り替えていますが、通常、移動費や食事代、場合によっては宿泊費など、面接を受けるだけでも想像以上のお金がかかります。掛かる費用は大学生のアルバイトの収入を簡単に上回ります。都内ならまだしも地方だと企業や面接場所や隣県であることも珍しくなく、就活に掛かる金額は地方に行けば行くほど増大する傾向にあります。
面接を受けるのに子供は「親がお金を出して当然」などとは思っていません。多くの就活生は、更なる出費をお願いすることに申し訳なく感じています。
親が思わず(悪意無く)「地元の企業でいいのでは?」「就活ってお金がかかるのね」「またどこかに受けに行くの?」呟いたりすると、子供は笑顔の下で「親に迷惑を掛けている」と罪悪感に苛まれます。
ちなみに、今まで専業主婦だった母親が働き始めたり、夫婦でお金のことで喧嘩したりするのを敏感に見ています(例えそれが自分の大学費用などに関係なくても、結びつけてしまいます)。
思わず口を突いて出る言葉は仕方ありません。常に発言に意識していたら、それこそ親の方がストレスで倒れてしまいます。
ですので、なるべく普段から「応援」の言葉を伝えるように意識してください。
「頑張ってね」「就活までは親にお金を出させてね」「初給料が出たらご飯をご馳走してね」「あなたが希望する会社に入れるように全力で応援するね」
普段からこういった言葉を伝えておくと、就活生の思考が「迷惑をかけている」よりも「内定をもらって喜んでもらおう」という想いが強くなっていきます。
冒頭でも書きましたが、就活生からは「親への感謝の気持ち」を本当に多く聞きます。そして親御さんからも「子供が心配」だから話を聞いてあげて欲しいと相談を受けます。
親は子を思い、子は親を思うのに、その思いを繋ぐ「言葉」が当人を目の前にすると出ないようです。
私も人のことを言えた義理ではありませんが、この世に生を受けてから一番長く付き合ってきているにも関わらず「親子とは不器用な関係性だな」と思います。
就活生の親が最後にするべきことは「背中を押す」こと
どの業界に就職するか、どの会社にするか、どの職種にするか、最後に内定をもらった会社でなど、就活生は悩み苦しみ、親から見ると未熟かもしれないけれど、自分で自分の人生の選択をしていきます。こういった何かを選択する局面で、親に相談をする(意見を求める)ことがあるのですが、ここで勘違いをしてはいけません。
この局面では、就活生はある程度自分の方向性は決めているので、実は相談したいのではなく「肯定」して欲しいのです。
相談を受けていると、「相談に来る段階で結論は出ていて、背中を押して欲しいだけ」の人が、かなりの割合で存在します。
しっかり話を聞いていると、「この相談者さんは、最初の一歩を踏み出すための、最後の一押しが欲しいのだな」と感じることが多いのです。
就活生が選択について親に相談する(意見を求める)時も同じです。親の意見を言うのではなく、子供と向き合って、話を聞いて、子供の心の中の答えをそっと後押しして上げてください。
就活についての口出しは厳禁
最初の問いの答えを書いていきます。読み手によってはかなり厳しいことが書いていると感じると思いますが、本当に何人もの親が子供の「自立」と「自律」潰しかけています。親が子供より「正しい」「物事を知っている」という認識を改めて読み進めてください。はっきりと明言しますが、子供の就活に「何十年前の自分の経験」や「よその親御さんやテレビから得た何の確証もない」ことを、まるでそれが正しいかのように言うのは迷惑なだけです。
子供がIT業界に就職したいのに「ITはブラックだからやめた方がいい」とか、逆に公務員になりたいのに「今からはITの時代だから公務員なんかやめた方がいい」、または「そんな聞いたこともない会社ではなく、大手の企業が良い」など、全く信憑性の欠片すら存在しないことを、「IT業界」や「公務員」の職務の全容、「聞いたことのない会社がダメな理由」や「大手企業が間違いなく良い理由」を、さも知っているかのように口にしていませんか?
働いたこともない業界や働いたこともない会社をどうして「良い」「悪い」と判断できるのでしょうか?
残念ながら「思い込み」と「知ったかぶり」で断定している親は少なくありません。そしてこのような親こそが子供の不幸な就職を量産しています。
実際、子供である就活生の方が、今の「業界のこと」「会社のこと」「職業のこと」を調べ研究し、実際にインターンシップへの参加や面接で会社の雰囲気を感じ、企業の発信している動画などを視聴して、その中で自分の将来の道を模索しています。
果たして、その子供の知識や経験以上に、親の聞きかじった程度の話が「今の就活において」正しいと、それを言っている当の親以外に誰が思うのでしょうか?
そして、子供が「そうではない」とか「自分はどうしてもこの業界(会社)に行きたい」と言うと、最終的に「勝手にしなさい」とか「最近のことは分からないからあなたが判断しなさい」などと言い出します。
勝手にしていいなら、最近のことが分からないなら、最後に放り投げるなら最初から口出ししなければいいのです。
そして、この段階になると「大学まで出してもらったのでいい就職をしないと」「沢山お金を使ってもらったから親の期待に応えないと」…の意味合いが否定的な意味合いを帯びてきます。
自分はこの会社に行きたいけど、親に反対されている。大学まで出してもらったので親の意見を優先しなければ…
わかりますか?
これから、親から名実ともに「経済的に自立していく」「人として自らを律して生きていく」ための、自分の人生の「本当の意味での最初の選択」、「幸せになるための選択」を、親との意見衝突で諦めてしまう就活生が毎年一定数必ず出てくるのです。
あなたの子供は「親に手を引いてもらって、親の考える幸せ」を幸せと感じる時期は卒業しています。
あなたの子供は「あなたの子供ではなく、自分で自分の幸せを決めることができる、ひとりの大人」なのです。
また、パソコン操作でも、スマホ操作でも、インターネットの使い方でも子供たちの方が優れています。
これは「今の時代の当たり前」を親よりも知っているということです。
蓄積された経験は親の方があるのは当然ですが、「今の時代」という断面で見ると、圧倒的に子供たちの方が経験しているのです。
それが理解できるのであれば「親の時代の就活や会社の選び方の経験」より「今の時代の就活や会社の選び方の経験」の方が時代に則している使える知識だと判断できるはずです。
働く意義や意味については親の経験が最大のアドバイス
就活についての口出しは厳禁と書きましたが、子供からの相談の中で「背中を押して欲しい」のではなく、「経験していないからわからない」ことがあります。それは、「お父さん(お母さん)にとって働くってどういうこと?」「働いていて一番嬉しかったことは?」「一番やりがいを感じたときは」「一番つらかったときは?」など、経験でしか語れないことです。
また、この系統の質問は「お父さん(お母さん)にとって」という、親御さんの主観を聞いているので、主観で答えることで、お子さんは納得を得ることができます。
自分の仕事が、子供にとって良い仕事とは限らない
子供に自分と同じ職業に就かせたがり、それ以外の職業に就くことを反対する親御さんがいます。私の経験だと、親が公務員だと、何故か自分の子供も公務員にさせたがる傾向が強く、逆に親が保育士や看護師だと、子供が親と同じ職業に就く傾向が強いです(あくまで私の経験上の割合です。また、地域性も影響が出ている気がします)。
親は登山が好きでも、子供は登山に魅力を感じないかも知れません。親は海水浴が嫌いでも、子供は水泳でオリンピックのメダリストになるかも知れません。
親と同じ職業についても、誰も将来「幸せになる」か「不幸になる」か、確実なことは言えません。
未来には無限の可能性があります。
子供の無限の可能性を潰すのは単なるエゴでしかありません。本当に子供のことを思っているのか、自分のエゴを押し通していないか、自分の夢を押し付けていないか、今一度胸に手を当てて考えてみてください。